ヴァイの日記 -密命2-
「チェニスに人質はいるのか・・」
アロン船長の船に、僕とアルヴェロは集まり海賊から聞き出した事について話し合った。
「海賊どもを連れて入港しかないだろ」
まだ敵海賊の返り血にまみれたシャツをきたアロン船長が声を荒げる。
「俺を騙した罪は重い。本来なら海賊どもなんぞ、マストにつるして煮干にしてやりたいところだ」
「まあ、気分は分かるけどな、アロン船長。でヴァイどうするんだ?」
「どうするもこうするも・・いくしかないだろう。リスボンに戻って艦隊なんて待っていたら捕まった貴族は生きてはいないだろうし」

チェニスの港はバルバロサ・ハイレディンの支配下にあった。
勇猛果敢で残虐な海賊の王であり、彼に沈められた各国の船は数え切れない。
「ポルトガル国旗を降ろせ」
海賊の支配する港町へ態々危険を晒してまで国旗を掲げていくべきではない。聞いた話だと、バルバロサはオスマン帝国に庇護を求めているらしい。
そうなると、強大なオスマン帝国の庇護の下、やりたい放題にキリスト教圏の船を襲えるだろう。
僕は船長室に戻り、服装を整えなおした。
イスラムの港にはいるには、それなりの変装が必要だからだ。
船長やアルヴェロもその点は知っているだろう。
「アドレだけ連れて港に下りる。あとの者はいつでも動けるようにしておいてくれ」
最近雇ったコルシカの屈強な水夫の名前をだし副長に命じた。
彼だけ連れて行けばポルトガル商船とは思われないだろう。
僕自身は、冒険者という職業がらイスラムの言葉にも精通しているし。

出航所におりたつと、アロン船長と捕虜の海賊の姿があった。
アルヴェロも、僕より少し遅れて下船してきた。
フワンとかいうアルヴェロになついて一緒に行動している子供はつれてきていないみたいだ・・懸命な判断だな。
「さあ、案内してもらおうか」
海賊を睨み付けながらアロン船長がいう。
「今度騙したら、俺の船の船首像にくくりつけてやるぞ」

・・・・・・・・・・結局また海賊に騙されたが。

なぜ助かったのか、僕には分からなかった。
海賊に騙され、僕らはバルバロサの獰猛な海賊達に囲まれてしまった。
彼らは、僕らを捕らえ船の積荷、装備、いや船自体を奪うつもりでいたのだ。僕らはおそらくガレーの漕ぎ手にされるだろう。

ところが、いきなり敵の首領たる男・・・バルバロサ・ハイレディンが現れ僕らを解放してくれたばかりか、貴族までも引き渡してくれたのだ。
なぜか、分からない。なんでだろうか・・・。
この日記を書いている時点でも、本当に分からない。
彼にとって、一切利益になる行動ではないはずなのだ、僕らを解放する事は・・・。

無論、彼の行動に反発した海賊もいた。
アロン船長に捕まった海賊達だ。
しかし、ハイレディンは一瞥をくれると、一刀の元に彼らを切り捨てた。
その行動に、一瞬にして海賊達は静まり、僕らはそのままチェニスの港を出港した・・。
待ち伏せとかを警戒したが、それもなく無事にパルマの港までたどり着けた。

「分からん、本当にわからんぞ・・・なんでアイツは俺達を見逃してくれたんだ・・・」
パルマの酒場で酔いつぶれたアロン船長の言葉に答えれるものはいなかった。

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